再婚後の家族が安定してくると、多くの家庭で検討されるのが「養子縁組」です。
戸籍上も“親子”としてつながることは、家族としての絆をより確かなものにします。
しかし、養子縁組には法律的な手続きだけでなく、心の準備や家庭内の合意形成が欠かせません。
この記事では、再婚家庭が知っておくべき現実と手続きを、わかりやすく整理していきます。
養子縁組とは？再婚家庭における意味
「法的な親子関係」を作る制度
養子縁組とは、血縁関係のない者同士が法律上の親子関係を結ぶ制度です。
再婚家庭では、主に次の2つのパターンが該当します。
| 区分 | 内容 | 主な利用ケース |
|---|---|---|
| 普通養子縁組 | 実親との法的関係が残る | 継父（継母）が子と養子縁組するケース |
| 特別養子縁組 | 実親との関係が消滅する | 虐待・ネグレクトなど特別な事情がある場合 |
再婚家庭では、普通養子縁組が一般的です。
これは「実父（または実母）との関係を残しつつ、継親が法的保護者になる」形です。
養子縁組をする主な理由
再婚家庭で養子縁組を選ぶ理由は多様ですが、代表的なものは以下の通りです。
主な動機
- 戸籍上も「親子」としてつながりたい
- 学校や病院などで「保護者」としてスムーズに対応したい
- 相続・扶養控除など法律的な安定を得たい
- 子どもに「家族としての一体感」を感じてもらいたい
特に子どもの年齢が低いうちは、将来的な安心感のために手続きを進める家庭が多い傾向にあります。
養子縁組の手続きの流れ
手続き自体は市区町村役場で完結しますが、事前準備と確認事項を整理しておくことが重要です。
ステップ1：家庭内の合意形成
まず、夫婦間と子ども本人の同意が最優先です。
15歳以上の子どもは本人の署名が必要となります。
確認ポイント
- 子どもが「なぜ養子縁組するのか」を理解しているか
- 実父（または実母）との関係について話し合ったか
- 無理に同意させる雰囲気がないか
心理的に不安がある場合は、カウンセラーや家庭相談センターの利用も検討しましょう。
ステップ2：書類準備
必要な書類は以下の通りです。
必要書類
- 養子縁組届（役場で入手）
- 戸籍謄本（本籍が別の場合）
- 本人確認書類（免許証・マイナンバーカードなど）
- 未成年の場合は家庭裁判所の許可書（必要に応じて）
提出先は養親または養子の本籍地、もしくは所在地の市区町村役場です。
ステップ3：家庭裁判所の許可（必要時）
15歳未満の未成年を養子にする場合、家庭裁判所の審判が必要です。
通常は1〜2か月ほどの審理期間を経て、許可が下ります。
養子縁組の「心の準備」
手続きよりも重要なのは、子どもの心への配慮です。
「戸籍上の変更」は大人にとって形式でも、子どもにとっては大きな変化です。
意識すべき3つの心構え
- 「本当の親子」ではなく「信頼でつながる家族」を意識する
- 手続き後も、以前と同じ関係性を丁寧に維持する
- 名前の変更（姓）などに、本人の意見を尊重する
この部分は、『継父としての立ち位置と向き合い方：信頼を築く7つの段階』でも触れたように、日常の関わりの積み重ねが最も大切です。
養子縁組のメリットとデメリット
| 観点 | メリット | 注意点・デメリット |
|---|---|---|
| 法律上の親子関係 | 保護者として正式に認められる | 戸籍に「養子」と明記される |
| 相続・税制 | 相続権・扶養控除などが適用 | 相続時に実親側との調整が必要 |
| 学校・医療 | 手続きや連絡がスムーズ | 名称変更などに一時的な混乱 |
| 心理的側面 | 家族としての一体感 | 子どもの年齢や理解度で反応が異なる |
制度的なメリットは明確ですが、家庭内での理解と信頼が伴わないと逆効果になることもあります。
養子縁組のタイミングと判断基準
焦って手続きを進めるのではなく、家庭が安定してからが理想です。
判断の目安
- 子どもとの信頼関係がある程度築けている
- 夫婦間で「なぜ今なのか」を共有できている
- 学年や環境の変化（転校・卒業など）と重ならない
もし関係構築の途中であれば、まずは『再婚家庭でうまくいくための「家族ルール」設計ガイド』で紹介しているように、家庭のルールを整えることから始めましょう。
手続き後のフォローが最も大事
養子縁組の届出が受理された後も、家庭としての関係づくりは続きます。
特に周囲（祖父母・学校・友人）への説明は、子どもの気持ちを最優先に考えましょう。
フォローのヒント
- 「戸籍のことは家族の中だけの話」と共有範囲を明確にする
- 名前の呼び方や家庭内ルールを改めて確認する
- 定期的に子どもと「これからの家族の形」について話し合う
まとめ：形式よりも、家族の信頼を育てる
養子縁組は「家族を完成させる儀式」ではなく、「これからを共に生きる覚悟の表明」です。
大切なのは、法律よりも心の準備。
時間をかけて関係を築き、子どもが自然に「この人が親だ」と思えるような環境を整えることが、最も価値のある“手続き”です。
制度や税制の詳しい部分については、次の記事
→ 『再婚家庭の家計と相続をどう整えるか：扶養・教育費・将来の備え』
を併せて読むと、より現実的な判断ができます。
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